歯を支えている骨が、歯茎の腫れを繰り返しながらこわされていく病気です。
自然に歯に発生したプラーク(歯周病菌)が数日間、停滞し続けることで生じます。歯磨きで歯肉から血がでた際に、鏡で歯肉を見ると色が赤くなり腫れているのに気付くことができます。痛みは伴わないので、気付きにくいです。歯を支えている骨は正常で溶けていません。
歯周病の原因は、歯周病を引き起こす細菌が、歯と歯肉の境目に定着し、増殖を放置してしまうことによって発症します。ただ、インフルエンザのように季節的にヒトからヒトに感染するものではなく、成人であれば、ほぼ全ての人のお口の中に存在する歯周病細菌が、歯磨きの不足(磨き残し)により、その数が増加し、生体に対して悪い影響を与えることによって起こります。
歯周病は糖尿病、心臓血管疾患、早期低体重児出産などとの関連性が数多く報告されています。ここでは、歯周病が原因となる全身疾患、その他全身疾患と歯周病の関連性について詳細に説明しています。
口臭の原因は様々ですが、その中でも歯周病を原因とする口臭が最も多く報告されています。ある調査によると、成人の4人に1人が口臭の問題を持っているといわれ、口臭による、社会生活への悪影響は、深刻なものです。
口臭には、一時的なものと、持続的なものがあります。一時的なものとしては、例えば、朝起きた時等、一時的に口の中が乾燥しているため発生する場合や抜歯等の歯科治療後に数日発生する場合があります。問題になるのは、持続的な場合ですが、その原因は、様々です。
従って、実際の口臭の治療に関しては、まず、原因を正確に診断することが重要です。そして、多々ある原因の中でも歯周病が原因となる場合が最も多く報告されているのは特筆すべき点になります。歯周病を治療することは、自分の歯を保ち続けるだけでなく、良好な対人関係を築くためにも大事なことです。
医学的に抜歯の基準は存在しますが、治療上は歯を支える骨が吸収し歯がグラグラになり、噛む力に耐えられず、お食事の際に自然とその歯で噛むのを避けるようになってしまった場合は抜歯を提案することが多いです。
ただ、お食事の際、噛む力の入れ具合と、噛む場所は患者様御自身で、無意識のうちにコントロールされているため、日常生活にはそれほど支障とならないことが多いです。歯を抜く必要性を患者様が感じられない場合は、初診時には検査結果を説明し、必要最低限の処置留めて、無理に抜くことはせずに患者様ご本人が抜歯の必要性を感じるまで経過観察をすることもあります。このことは非常に重要なポイントですので遠慮なくご相談ください。
歯周病専門医は、1本の歯だけを診て治療するのではありません。どのように治療を組み立てれば、治療後だけでなく、治療期間中も患者様が左右のバランスが取って痛みを感じることなくできるようになるかを考えています。そのため、治療上、最終的には抜歯しなければならない歯も、治療開始当初は抜歯をしない方が、治療を進める上でメリットが大きいと判断した場合は抜歯を行わず、治療後半に抜歯を敢えて先延ばしにすることもあります。
歯周病治療後に、2~6か月に一度の定期的なメインテナンスを行うことで、治療の効果が長続きしていくことになります。ただ、患者様ごと、また治療前の状態が軽度歯周病、あるいは重度歯周病であったかによっても当然、メインテナンス方法や期間が異なってきますので、患者様に合った最適なメインテナンス方法をご用意させて頂きます。
毎日の歯磨きが非常に重要です。よく言われるのは「歯を磨いているのと、磨けているのは違う」ということです。ただ自己流で、ただ磨いているだけでは磨き残しが多く残りがちです。ちゃんとした磨き方をマスターし、しっかり磨けている状態を一緒に目指しましょう。
当院で歯周病治療を目的に来院された患者様には、歯周病専門医が患者様の症状や、患者様の治療に対する希望を入念にお聞きした上で、患者様に合った検査を行い、的確な検査・診断のもと、患者様に合った治療計画を提示させていただき、納得していただいた上で歯周病治療を進めていくことを徹底しております。
患者様のご希望によっては、歯周病検査後、ご自身の状態を把握していただいた上で、今回は積極的な処置を行わず最小限の処置に留める方法をお選びいただくことも可能です。その際は、今残っている歯を少しでも長く使えるように、可能な限り努力させて頂きます。
① 痛くなく噛めること。
② 左右の奥歯でバランスよく噛めること。
③その状態を長持ちさせること。
この3つを達成し、美味しくお食事を召し上がっていただけるようにすることです。
歯肉は淡いピンク色をしていて、歯と歯の間の歯肉の形はきれいな三角形をしています。歯と歯肉の境目や歯と歯の間にはプラークがなく、歯磨き(プラークコントロール)が非常に良い状態だとこの状態が維持できます。
- 特徴 -
歯肉のみに止まらず、歯を支えている骨にまで炎症がある状態です。歯肉の炎症は歯肉炎と同じで、腫れて赤くなり歯磨きのときに出血してきます。そして骨が若干溶けてきます。骨が溶けることによって歯と歯肉の境目の溝(歯周ポケット)の深さが深くなってきます。
- 治療 -
軽度歯周病の治療は、患者様による歯磨きと、歯科医院における歯石除去がメインとなります。軽度の場合は、歯肉の外に見えている部分のプラークコントロールだけで治療が可能になります。
- 治療回数と費用の目安 -
1~2週間に1回の来院で、1~2か月程度の治療期間がかかります。費用は保険治療でカバーされており、多くても1回の来院で数千円程度です。
- 特徴 -
軽度の歯周病の症状に加えてさらに、歯を支えている骨が半分くらい溶けていきます。少し歯がぐらぐらするようになり、歯が浮いたような感じがし、だんだんと硬いものが噛みにくくなってきます。歯周ポケットはさらに深くなり、プラークによって歯肉が腫れているのでさらに深く細菌が進入していきます。そして歯根に歯石が付いてきます。こうなるとポケットの中まで歯ブラシの毛先が届かないし、歯肉からの出血や痛みを感じるのでさらに歯磨きができずより病気が進行していきます。歯と歯肉の境目からは膿が出でくるところもあります。
- 治療 -
中等度歯周病の治療では、歯磨き・通常の歯石除去に加えて、SRP (歯肉縁下スケーリング・ルートプレーニング)が必要となります。中等度になると歯周ポケットが深くなり、歯肉で隠れている部分にもプラークが停滞するようになりますので、その部のプラークコントロール(歯肉縁下プラークコントロール)がさらに必要になります。
- 治療回数と費用の目安 -
1~2週間に1回の来院で、6か月程度の治療期間がかかります。費用は保険治療でカバーされており、多くても1回の来院で数千円程度です。保険で歯周外科治療を行う必要がある場合は、1万円程度かかる場合もあります。2017年より、再生療法も一部、保険で行うことができるようになりました。
- 特徴 -
重度歯周病になると、歯を支えている骨は三分の二以上が溶けて、歯周ポケットは非常に深くなり、歯がぐらぐらと動きだし物が食べにくくなります。歯も飛び出てしまい、歯が長く見えてきます。歯根に大量の歯石が付き、歯肉は下がり歯根が見えてきます。また歯肉は赤く腫れていて、歯と歯肉の境目からは膿がでてきます。朝目覚めると口の中がねばねばし、血の味がしてくることもあります。口臭も強くなります。一般の歯科医院では、重度歯周病と診断した場合、抜歯を勧めるケースがほとんどですが、再生療法などにより保存が可能な場合も多々ありますので、是非一度ご相談下さい。
- 治療 -
重度歯周病の治療は、難易度の高い治療方法も含めて複合的に進めていきます。歯を残せるかどうかが歯周病専門医の腕の見せ所です。重度歯周病の治療は、その状態により可能な治療の選択が多岐に渡り、患者様の要望も含めて総合的に進めて行きますが、基本にあるのはプラークコントロールで、さらに失われた組織の回復が必要になります。重度の歯周病治療こそ、歯周病専門医が最もその力を発揮する分野といえます。また、可能な限り歯を残すことを目標としますが、全体の長期的安定を考えて、やむを得ず抜歯をお勧めする場合もあります。
- 治療回数と費用の目安 -
1~2週間に1回の来院で、12か月~18か月程度の治療期間がかかります。費用は保険治療でカバーされており、多くても1回の来院で数千円程度です。保険で歯周外科治療を行う必要がある場合は、1万円程度かかる場合もあります。重度歯周病の場合、骨や歯を失ってしまっている場合が多く、骨を回復させる再生療法や、歯の代わりとなるインプラント、義歯を用いて口腔機能を回復する必要が多々あります。その場合、患者様の希望によってはインプラント治療等の保険外治療に移行することになります。
STEP1 | カウンセリング |
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STEP2 | 問診・検査・診断後、立案した治療計画にご同意頂いた後に具体的な治療が始まります。 |
STEP3 | 再評価 |
STEP4 | 歯周外科治療 |
STEP5 | 再評価 |
STEP6 | 口腔機能回復治療 |
STEP7 | 再評価 |
STEP8 | メインテナンスへ移行 |
STEP1 | 問診 患者様が来院された背景、ご要望、ご不安など、気持ちの部分をはじめ、食習慣、生活習慣など今後の治療に必要なお話を聴かせていただきます。これまで他医院への通院で不安だったこと、不満だったこと、何でも遠慮なくお話下さい。 |
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STEP2 | レントゲン検査 顎の骨を含めた全体を調べるパノラマレントゲン写真、歯周病治療時に必要な、より細かく個々の歯、歯茎の状況を調べる10枚法や14枚法といったレントゲン写真をとり、目に見えない内部の状況を調べます。 |
STEP3 | 口腔内写真撮影 現在の状況の記録または、患者様への説明ツールとして歯および歯肉の写真をおとりします。 |
STEP4 | 口腔内診査(歯周病検査) ・歯周ポケット検査…ものさし(プローブ)で歯と歯肉の間にある溝の深さを測る。 ・歯肉の出血検査…ものさしの出し入れ時の出血の有無をみる。 ・歯の動揺度検査…前後、左右、上下に動かした時の歯の動きの程度を測る。 ・プラークコントロールレコード( PCR )…磨き残しがどれぐらいあるかを調べる。 ・根分岐部検査…歯根が複数に分かれている歯の別れ始めの部分に病気が進行しているかを調べる。 |
STEP5 | CT検査 通常の2次元のレントゲンでは、平面的な情報しか得られませんが、CTスキャンを活用することで、歯を支える骨の吸収の向き・深さなど状態を手に取るように把握するこができ、歯周病の進行度合いの正しい診断と的確な治療を行うのに役立ちます。 |
STEP6 | 検査結果のご説明、治療提案 実施した検査結果から総合的に考え、診断を行います。現在の状態、考えられる原因、治療の方向性のお話まで詳しくお伝えしてその後の治療プランを選択して頂きます。 |
日本歯周病学会認定 歯周病専門医である院長が直接お話致しますので、分からないことがあれば遠慮なさらず、納得するまでご質問下さい。
初診の患者様の「診断」と「治療」は、全て、日本歯周病学会認定歯周病専門医である院長の大西英知が担当します。
保険診療を遂行するためには、保険診療のルールに従った検査を行わなければなりません。その検査は、実施のタイミング、その内容が厳格に規制されており、その規制を少しでも逸脱しようものなら、保険が全く適用されません。残念ながら、臨床的な必要性にそぐわない場合も多くあります。よって、より精密な診断とその後のより良い治療を希望される方には、保険診療の枠組みを越えた様々な検査をお勧めします
国内外の歯周病学会では、毎年最新の治療方法が報告されています。しかしながらそれらの治療法の多くは、健康保険診療で選択が不可能な治療法であり、その恩恵を授かるためには、保険外診療を選択する必要があります。日々海外の論文や学会に参加して歯周病の患者様に有効・有益であると考えられる治療を勉強し、それを患者様に還元することが歯周病専門医の責務と考えています。
保険診療のルールでは、1回の来院で行うことができる治療内容、治療部位が限定的になるよう指導されているため、そのルールに従う場合、少しずつしか治療を進めることができず、結果として来院回数が増え、治療期間が長くなる傾向が強いです。
一方、自由診療においては、そういった制限がないため、短期間・無痛で保険治療よりも格段に効果のある歯周病治療を提案・提供することが可能です。
治療に使用する薬剤の種類、使用法も健康保険では厳密に決められています。しかしながら、健康保険では適用になっていない種類の薬剤とその用法が国際的に推奨される場合もあります。
例としては、慢性の歯周病の治療のために抗生物質を服用することは保険診療では認められていませんし、歯周基本治療後に生じる痛みの緩和のための鎮痛剤投与も厳密には認められていません。
スケーリング | スケーリングとは歯磨き時に、磨き残したプラークが、歯と歯茎の境目に付着して歯石となったものを除去する処置です。 定期的な検査を行い、早期に歯石を除去することで 歯周病の悪化を防ぐことが可能です。 |
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歯周組織再生療法 | 歯周組織再生療法とは歯周病によって失われた歯周組織(歯を支えている組織)を再生させる治療法のことです。 |
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- エムドゲイン(保険外料金) -
エムドゲイン、骨補填材、メンブレンの併用が可能で再生しやすい環境が整えやすいので適応症例が広い
- リグロス(保険適用) -
保険治療で再生療法が可能だが、他の再生材料との併用は禁止されているので適応症例が限られてくる
※ 臼歯部の根分岐部病変は保険適応外となっております。
歯周外科治療(フラップ手術)とは,歯周基本治療(スケーリング、かみ合わせの調整)では症状が改善しない場合に外科的方法によって,
歯周病の治癒を目指す治療法の総称であり,歯周基本治療では除去できない細菌を取り除くことなどを主な目的とします。
骨移植術は,歯周病により吸収した骨欠損に骨移植材を補填することによって,骨欠損の改善,歯槽骨の形態修正,歯周組織の再生を目的とする外科手術です。この際に用いられる移植材には自家骨,他家骨,異種骨,人工骨がある。
歯周病で骨が部分的に下がってしまった方が最も適応症例です。
自家骨移植術 | 骨移植材を同一個体から採取 |
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他家骨移植術 | 骨移植材を本人以外から採取 |
同種骨 | ヒトから採取・処理した凍結乾燥骨や脱灰乾燥骨 |
異種骨 | ウシやブタ由来の骨 |
人工骨移植術 | 人工合成物 |
人工骨 | ハイドロキシアパタイト,バイオガラス,リン酸三カルシウム等 |
GTR法 (組織再生誘導法)は,新付着を伴う歯周組織の再生を目的に考案された。非吸収性または吸収性膜を用いて,上皮と結合組織の侵入を遮断し,歯根膜由来細胞を根面上に誘導して選択的に歯周組織の創傷治癒を促し,新付着を伴う再生を目的とする。適応症は2壁性,3壁性の垂直性骨欠損,および1~2度の根分岐部病変である。根分岐部病変の予知性は,歯や分岐部の解剖学的形態と骨欠損の形態に依存すると考えられており,根分岐部病変に用いる場合は,ルートトランクの長い歯では予知性が高い。
幼若ブタ歯胚より抽出・精製したエナメルマトリックスタンパク質 (EMD)を用いる。アタッチメントロスの生じた歯根面に適用して,歯根面に無細胞セメント質を誘導することによって歯周組織の再生をはかるものである。適応症は1壁性,3壁性の垂直性骨欠損,および1~2度の根分岐部病変である。臨床的効果は前出のGTR法との間に有意差はないが,1壁性の骨欠損を含む複雑な骨欠損,多数歯にわたる骨欠損,歯根の近接,および角化歯肉が少ない症例でも適応できる。
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